もしかしたらもう
あの瞳は


あたしを映してくれないかもしれない。




やっと
二人の間にあった障害はなくなったのに


そうくんは固く瞼を閉ざしていて。






学校に行けば
明るく振る舞えても


一人になると心が潰れてしまいそうだった。





何かがうまくいけば

何かがまた崩れてゆく。


まるで迷路のように
そこから抜け出せなくなっていて。


優しすぎる波の音。


この真の蒼さは
もうあたしの心に響かない。





そんな時――…



「すいません。」

俯き
涙を拭くあたしは
その呼び掛けに静かに振り返った。




そこにはウェット姿のサーファーカップルが立っていて。




そして続けてあたしに尋ねて来た。



「もしかして…海音さん…ですか?」