そして
そっと手のひらを握る。
温かい手のひらに
あたしは両手で自分の顔にあてた。
「ねぇ…。また、秋が来たね…。」
瞳を閉じて
一年前を思い浮かべる。
思い返せば
辛い、苦しい出来事ばかりで
だけどすごく、一生懸命だった。
香苗を裏切れなくて
大輔を傷つけたくなくて
お互い、ずっとすれ違っていて。
『好き』
気持ちを告げた時は
本気で全てを捨てても構わない。
そう思ってた。
ねぇ。
もう一度
あなたの声で聞きたい。
「そうくん……。
早く…起きてよ……。」
もう一度
その声で
『海音。』
あたしを呼んで。
そして
抱き締めて。

