それは
香苗の退学届けで。




「俺は田村が戻って来るって信じてた。」

「浦吉……。」



ポタリと退学届けに水滴が落ちて
視線を向けると香苗が泣いていた。


香苗―――…



あたしは静かに香苗の肩を抱き締める。


そんなあたし達に
浦吉は腕を組んで続けてこう告げた。



「その代わり。」


香苗と二人
浦吉を見上げる。




「一回でも遅刻したら即校長に渡すからな!」


悪戯っぽく笑う浦吉は
乱暴に
香苗の頭を撫でて。




「了解……っ!」


涙を流したまま
香苗は最高の笑顔でピースマークを作る。



「…浦吉……。」


「沖村も、ちゃんと卒業まで頑張れよ!」



そう言って笑う浦吉は
やっぱり
最高の教師だと思った。




ありがとう、浦吉。



あたし、浦吉の生徒で本当によかった。







ありがとう。