「…痛いか?」
「…大丈夫…。ありがとう…。」
部屋に消毒液の匂いが充満する。
香苗の手首に包帯を巻いた俺は
救急箱の蓋を閉めた。
俺は結局
香苗を一人に出来なかった。
殺風景な香苗の家は
物音一つしない。
「…何か食うか?何も食べてないだろ。」
そう言った俺は
この場の雰囲気を変えるように
明るく振る舞って立ち上がる。
「やだっ!!」
「………香苗…?」
台所へ向かう俺の手を引いて
香苗が呟く。
「……どこにも行かないで。
…もう、一人にしないで…。」
か細く途切れる声。
包帯の巻かれた腕は
微かに震えていて。
ズキンと心が痛んだ。
そして香苗の前に座り込んだ俺は
少しだけ微笑んで香苗に告げた。
「心配すんな。
俺はここに居るから。な?」
俺のその言葉に
安心して顔を緩ませた香苗は
力なくまた腕を下げる。

