春ボケとはよく言ったもので
花粉症と無関係のあたしは香苗とは違う悩みを抱えていた。



「眠い。春ってどうしてこんな眠いんだろ。」

「海音、それ毎年言ってるよ?」



代わり映えのないクラスの風景に
三年生になったという実感が沸かない。


ただ一つ変わったのは
クラスの階が
二階になった事くらいだった。




「おーい。席に付け。」


ざわめく教室に
見慣れた担任が教卓に立つ。




「また浦吉かよ!」

「も~見飽きた、浦吉の顔~。」


はやしたてるクラスメートに

「うるさい!」なんて笑って怒るフリをした浦吉に
クラスのみんなが笑ってた。




浦吉は
みんなに慕われている。



他のクラスとは違い、うちのクラスに変な派閥がないのは


浦吉のこの人柄のおかげだと思う。