校門から校舎まで続く木々達がピンク色に染まる。


まだ花を開いたばかりの桜が
校舎を明るく見せた。



「…くしゅっ!」

「……大丈夫?目、真っ赤だよ?」


ティッシュを片手に
香苗は咲き渡る桜の木を見上げる。




「あたし達もとうとう、三年生かぁ…。」


そうぼやいた香苗は
再び可愛いらしいくしゃみをした。



「病院行ったら?鼻だけ化粧がはげてるよ。」

「海音は花粉症の辛さがわからないのぉ?」


ぐずぐずになった鼻声で香苗はあたしを睨み付けた。





季節は春。


蒼い空に
入道雲が流れてゆく。





この年は
あたし達にとって


高校最後の一年。