コンビニでバイトを始めたばかりの頃
あたしは欲しいワンピースを見つけてしまった。
今思えば
何であんなの欲しかったんだろう。
そう思うけど、あの時はすごく欲しかったんだ。
悩んで悩んで
結局あたしは
買おうと思えば買えたそのワンピースを
着る事もなく
お店のショーウィンドーを去った。
「さようなら。」
涙は乾いてた。
あたしは十分、涙を流したもの。
もう、これで終わり。
「海音…!」
背中に響く呼び掛けに
あたしは足を止めずに歩く。
たまに砂浜に足を取られそうになった。
あたしにとって
そうくんはあのワンピースみたいな物でしかない。
今は欲しくても
きっとこの選択が正しかったと
いつの日か思う時が来るだろう。
繋いだ糸は
あたしの手によって
見事に二つに別れてしまった。
もう、愛しい人の声は
聞こえない。