ザザン……



遠くで
波の音が聞こえる。


あたしは出来る限り静かな所を選び
口元を隠すように携帯で会話する。




「ごめんね、本当に…。」

『いや、いーよ。大丈夫!じゃあ映画はまた今度な。』

「……うん…。ごめんね…。」



終話ボタンを押して
見渡した先に
防波堤に座るそうくんの後ろ姿が見えた。





大輔に
あたしは嘘をついた。


『おばあちゃんの体調が思わしくなくて…』

うちは
おばあちゃんも一緒に同居してる。

糖尿病を患うおばあちゃんは
最近少しモノボケが激しい。



だけど至って元気だ。




身内を嘘に巻込むなんて最低な女。



いつからこんなに

嘘をつくのに
罪悪感を抱くようになったのだろう。