「こんなことあったのに、あたし...怒りたいのに...星桜の事怒れないんだぁ…」


今のあたしは、怒るということより



絶望―――。



という、思いしか頭になかった。

それに――。

あの男、あたしの兄の裏切り、
悲しい行為も、思い出してしまったから。







「っ!!?」



突然、あたしを抱きしめていた腕が強くなる。



「俺は・・・・。」



「そ…宙?」



「俺だったらそんな悲しい目にあわせねえよ。叶愛に、兄貴…ッ!あの男の事を思い出させるようなことは…絶対にしないっ!」




宙…。
あたしの気持ちわかってたんだ―――。
ありえないほどの悲しみに満ちているあたしを。
あいつを思い出してしまってるあたしを。



「…俺がいる。朱夏も、大翔も。…だからっ」



「ありがと。宙。あたし大丈夫だよ?がんばれる気がする。」



星桜の事は、まだ信じられない、信じたくない。



あのあたしの兄、あの最低野郎は、もうあたしの前には現れない。

だからだいじょうぶ―――。



がんばれるから。




「宙は…すごいね?あたしの思ってることすぐ当てちゃうんだもん!」




「俺と叶愛どれだけの付き合いだと思ってんの?」



「だねッ!宙がずっと隣でいてくれてよかったよっ」



あたしはにっこりと笑いかけた。
宙はあたしの手をとって、そのまま二人で教室へ向かった。