「…ちょっと先輩いいですか?」
しばらくした頃のこと。
愁が撮影が終わった後、訪ねてきた。
「…んだよ。」
「帰って来てたんですね。」
「一応な。」
「先輩…荒れました?」
「別に荒れてねぇよ。」
そうですかね?と愁は首をかしげた。
「今の先輩を見たら、葵はどう思いますかね?」
“葵”という言葉にいちいち反応してしまう俺。
そんな俺を見て、愁は顔をしかめた。
「葵…言ってましたよ。“もう待ってるのは疲れた。”って。」
「え…」
「だから、僕言っておきました。僕にすればいいのにって。……いつまでもそうやって引きずられても、困るのは葵ですよ?」
愁の言葉が痛かった。
俺は直視出来なくて、視線を地面へと移した。
「葵のためなら……今すぐ別れてください。今日はそれだけ言いに来ました。」
本当に愁はそれだけ言うと、またどこかへと行ってしまった。
“葵のためなら”
その言葉が俺の頭をぐるぐると回っていた。
* * *
あれから暫く経って、
撮影が終わった後のことだった。
いつもように、外へと出ようとした時。
「…あっ!新庄君!」
「どうもお疲れ様でした。」
「今日暇かな?」
「なんでですか?」
「ご飯一緒に食べに行かない?」
「あー…えっと今日は…」
「そっか…ごめんね。急に…」
「いや、こっちこそすいません。」
そんな会話をしながら、外へと出た時。
久しぶりに見た顔
声
一目で誰だかわかった。
「新庄君…?」
「今日…やっぱり一緒に食べに行きましょうか?」
「本当?!やったぁ!」
愁の言葉が頭をよぎった。
俺はなるべく、葵を視線にいれないようにして、通り過ぎた。
早く俺を忘れてもらえるように…
そう願いをこめながら。

