「…そういうことか。」
わかってしまえば、簡単だった。
何の感情も湧いてこない
さっきまで後悔していた自分が馬鹿みたいだ。
「ははっ…」
無理して笑ってみたけれど、乾いた声が耳に入ってきて、余計に虚しくなるだけだった。
それから、どこをどう歩いたのか覚えていない。
気がつくと、いつの間にか繁華街へと着いていた。
俺の求めていたものとは真逆の場所。
葵の温もりとはほど遠い場所。
「俺は………捨てられたんだ。」
自分に言い聞かせるかのように、そう呟いた。
それでも実感が湧かなくて
さっき、あんな光景を見たばかりなのに
葵が後ろから「琉依…!」そう言って追いかけて来てくれるんじゃないかと、期待している自分がいた。
もうこれで何度、後ろを振り返っただろう…
何度振り返っても、葵の姿が見えることはない。
でも、よく考えればこれが当たり前なんだ。
一人で自分勝手に外国に行くなんて言って、
一ヶ月近くも何の連絡もしないで
挙げ句の果てに帰って来れないなんて嘘までついた。
愁にも言われていた。
『でも、いつまでも先輩みたいに余裕顔してると、葵の方から逃げ出しちゃいますよ?』
実際、その言葉通りになった。
葵がどれだけ寂しいか、
そんなこと誰よりも一番わかっていたはずなのに
誰よりも一番わかっていなかった。
本当は余裕なんか、これっぽっちもないのに
葵の前では大人でいたかった。
そんなのただのエゴだけど…
俺の中の何かが音をたてて崩れていった。

