「…先輩…」
「琉依。」
「えっ…?」
「いつまで先輩なわけ?名前で呼んでよ。」
いつもとは何処か違う雰囲気に酔いそうになる。
素直に先輩の胸に飛び込みたくなる。
「呼んで?」
「…琉、依……?」
「なんで疑問形?…まぁ、いいや。」
“良く出来ました。”
そう言って、琉依は笑った。
そして、あたしを強く抱きしめた。
「すげぇ嬉しい。」
琉依はこの時気付いてなかったかもしれないけど、
あたしは知ってたよ?
今あたしを抱きしめる前に、
琉依の胸の中には、あの“茜さん”がいたこと。
ほのかにバラの香りが鼻をかすめたから。
目頭が熱くなるのを抑えて、
琉依の胸の中で静かに泣いた。
声も涙も出さずに
静かに泣いた。

