家に入ると執事さんが、昨日と同じように迎えてくれた。
「あの…琉依様はどちらに…?」
「後から来るみたいですよ。」
わざと明るく話した。
余計なことを考えないように…
そうしないと、心が折れてしまいそうだから。
自分の部屋まで入ると、そっと窓から外の景色を見た。
そこにはいるはずの先輩とあの人の姿はなくて、
沈みかけてきた夕日にポツンと電信柱が寂しげに照らされているだけだった。
* * *
しばらくして、玄関の扉の開く音がした。
足音は段々近づいてきて、あたしの部屋の前で止まった。
「…葵」
そう儚げに呼んだ声は、廊下の冷たい空気に染み込んで消えていった。
「…開けて」
再び声が聞こえたけど、
あたしの体は硬直して動かなかった。
「葵…開けてくれよ……」

