7時12分。

「和弘…?」

名前を呼んだ。
向かえに座っていた男の子はゆっくりと顔をあげて、あの優しい笑顔で

「琴美。」

と、呼んでくれた。
インテリ君がいる。
いつも電車で探していた、インテリ君がいる。
涙が自然とでてきてしまった。
単語帳がにじむ。

インテリ君は、ゆっくり私の前にきた。

「琴美、ごめん。留学すること、琴美だけには言えなかったんだ。」
「…うん。」
「留学すること、琴美にいったら俺が留学をやめそうだった…ずっと琴美の傍にいたかったから。」

えっ?
インテリ君が私の傍に?

「だから、琴美に言わずにイギリスに行った。でも、すごく後悔したんだ。留学から帰ってきたら、琴美に伝えようと思った。」

インテリ君は、私の手を握った。
インテリ君の大きな手が私の手を包みこんだ。