いきなり現れて、勝手に潜り込んだ私は何者なのか少女は考えていた。

『おちついた?』
自分の目の前には人の良さそうな若い女性。自分を捨てた母と同じくらいの年だろうか。

『ここはどこ?家に帰りたい』

女性は微笑みながら言う
『今日からココがおうちなのよ』

少女には理解できない。
それもそうだ、ここに来たのはほんの数時間前。
見知らぬ警察官が見知らぬ建物につれてきて、しかも建物の人もいきなり来た見知らぬ自分をいきなり愛想良く出迎えるのだか。

『私は春名敦子です。お名前は?』

またこの質問だ。

『私にはわからない』
少女は震えた声で言う

この敦子という女性がまた聞く。

『みんなからは何て呼ばれてたの?』

わからない!!
みんなあたしを呼んだことなんてない!

『呼ばれてない』

これしか答えがなかった。
『じゃあ私がよんであげるよ』

敦子が言った。

『さくらちゃんね。』

桜…

もう寒い秋のど真ん中この人はなぜこの名前を思い付くのか、少女には謎だった。

『さくら…』
少女は今までない不思議な気持ちと感じたことのないくらい騒ぐ自分の胸の音に戸惑いを感じた。

『さくらちゃん。おなか空いたんじゃない?なんか食べようか。』

これが名前。。。

今まで脱け殻のようだった少女から炎が灯ったようにあたたかい光が見えてきた。