1979年某所、一人の若い女性が子供を連れてある場所にやって来る。

『お母さんここどこ?』
『…』

母らしき女性は幼い少女の質問には答えない。

そして繋いだ手を引き離し急ぎ足で自分の車に戻る。
!?
『お母さん!?まって』
少女は母の乗る車のドアにしがみつく。

『来るな!!名前もないクズの癖に!!あんたなんか必要ない。』

その言葉小さな少女はどう受け取ったのか、とっさに小さな手をドアから話した。
女は大きく息を吸うと冷たい表情で
『私はあんたの親なんかじゃない』
と言い放った。

返す言葉も出ず少女はただただ立ちすくんだまま、走り去っていく車を見つめていた。

寒い秋のどしゃ降りの日のことだった。


それから一時間くらいたったのか、遠くに光の粒が見える
『お嬢ちゃんどこの子?』30半ばの警察である。

少女はうつむき黙ったまま。

『お名前は?』
少女はゆっくり顔をあげたそしてただ一言。
『無い』

小さな少女にこの質問はどれ程重くのし掛かったのか、涙も流さずただそこに立っているだけの子からは生きているという感じが全くしなかった。

警察官はふと目の前の建物を見てさっきよりも明るい声で少女に聞いた。

『あっ。そうかここの子だね!』

『…』

警察官は返事も聞かないまま少女を建物の中へ連れ込む。


そう。この建物は孤児院である。