『赤い闘燃志瞳』を持つ[破軍星羅(はぐん せいら)]は17歳で高校2年生。


そして日本で最年少の美少女プロハスラー。

胸元が大きく開いた[勝負服]がトレードマークの、人気ハスラーだ。


今日も世界大会の日本予選で優勝、世界大会への切符を手にした。

「セーラ!
今日の勝負、最高だったよ!
最後のゲームなんてさ、まさかマスワリ(ブレイクショットから、一度もミスせずに全ての球をポケットすること)で決めるとは思わなかったよ!

何はともあれ、世界大会進出おめでとう!」

いつも星羅の活躍を傍らで見守って来た、彼女の親友[安倍川(あべかわ)ナツ]が称賛と労いの声を掛けながら、汗拭きの為のハンドタオルを渡す。


「ありがとう、もっち!」

余談だが、勿論[もっち]というアダ名は、彼女の苗字[安倍川]から来ている。


星羅は汗を拭いた後、キュー(ビリヤードで使用する、球を突く棒)を分解してケースにしまおうとしていた。


ピュイィィィィ…


「あ…」

カラアァァン!


「ちょっとセーラ!!
どうしたの!?
大事なキューを落とすなんて…
体調悪いの?」

茫然とし立ち尽くしたままの星羅は、背後からのナツの言葉に驚いたような表情で振り返った。

「もっち、ゴメン…
私…行くから……
行かなきゃ!!」

星羅は用具の片付けもそのままに、まだ観客で混雑している会場の出入口から人込みを押し退けるように走り去って行った…


「ちょっと!?
セーラってばぁ!!
今日の打ち上げ来るんでしょ?
場所、予約しちゃったんだから、遅れないでよね!!」