「何、話してたんだ?」

自分の話をしていたと聞けば、気にならない筈がない。

「知りたい〜?」

悪戯に笑う冬花を見て、知りたいと思う気持ちが少し薄れた。

こういう時はあまり良いことがないからだ。

「やっぱ、いいわ」

秋人がそう言うと冬花はつまらなそうにした。

「えー、聞いてよ」

「遠慮しとく」

髪をわしゃわしゃと撫でてずっと自分を抱き締めている冬花を少し離す。

いい加減人前で抱き締め合ったままというのも恥ずかしい。

「それで、今帰りか?」

「うん、海里はもう家に着いてるんじゃないかな」

冬花は自分が歩いてきた方をじっと見つめる。

冬花と秋人との身長には結構な差がある。

見下げる側である秋人はいつも大きな瞳と長い睫毛に胸が大きく跳ねる。

(慣れないなぁ…)

そんな事を思っていると冬花は不意に手を差し伸べてきた。

何も考えずにその手を取ると冬花は引っ張って歩き出した。