「俺は……わかんない」

 わから、ない?

「なんだそれ。可愛い子が好きっていつも言ってるのにか?」

「そうなんだけど。今日、3年のおねぇさまに告白されたんだよね」

 弓香が話してたな。
 バレンタインを見越して先に、って考えでもしたんだろうか。

「その人すっげー可愛くて。でも、好きとか付き合ってとか言われると、何かもうどうでも良くなっちゃってさ」

 成都は、プレゼントを渡す相手の名前は聞いても、告白してくる相手の名前は聞かない。
 そこにどんな思いがあるのかは知らないが、成都の中で何かが変わってしまうのだろう。

「それ、クラスのヤツらが聞いたら怒られるぞ」

「好きでもないのに付き合えませんー」

「案外マジメだな」

「親友のクセに知らなかったのかよ」

 ぶつぶつと文句を言いながら成都はケーキを食べる。
 成都の口から『親友』って言葉を聞く度に後ろめたいような気分になるのはいつものことで。
 ちくりと痛む胸の内は、ずっとずっと、しまっておこう、と思い直す。