「まるで芸能人だ」

 千佳の呟きに、あたしはおとなしく頷いた。
 あっけにとられて、ただ女の子達を眺めていた。

 そうだよね。
 先輩にチョコを渡したい子は沢山いるんだ。

 あたしだけじゃない。

 渡すか渡さないかで悩んでた自分がバカみたい。
 ちょっと期待してた自分が嫌。

「千佳、もういいよ。行こう」

 あたしを呼び止める千佳の声を無視して、あたしは階段を下りた。
 教室に入ろうとしたら、丁度ヒロトが出てくるところだった。