広い牧場、何もない草原に公道が一本通っているだけの寂しい景色の中、みるくはジローが帰るまで牛小屋に戻ることもなく草原で孤独に待つのだ。

風のざわめきの中で。



すると、殺風景な公道を一人、みるくに向かって歩いてくる者がいる。
托鉢の僧侶の恰好をしている。草を食べているみるくの前で、そいつは立ち止まった。



「こんにちは、みるくさん。今日も愛しいジローくんを一途に待ち続けているんですね」
牛に話し掛ける不審な坊主が一人。みるくは、いかにも悟ってますと言うような細い目をしたそいつに、素っ気なくケツを向けた。坊主は一瞬顔をしかめたが、


「いつもつれない人ですね。私はあなたを救おうと、あなたの願いを叶えて差し上げようと思って来たのに」



その坊主の言葉でみるくの静かな瞳が、まるで感情を持つかのように焔を宿した。