答えに迷っている私を見て、戸村さんは少し困ったように笑った。

「ごめん、答えにくいよな」

「…え?」

「中岡は野球が上手かったから、君が惹かれるのも仕方のないことだし」

「中岡って…キャッチャーの…」

「もう辞めてんだけどね、なかなか諦めつかなくってさ」

「どうして辞めたか…わかりますか?」

意を決して聞くと、戸村さんは少しの間押し黙ってから口を開いた。

「…わからないんだ」

「…わから、ない……」

「本当にいきなり、今日で辞めます、と言ってきて…止めることもできなかった」

野球の上手かった彼には、不安も心配も何もなかったように見えたのに。

楽しそうに野球をしている彼からは、誰も辞めた理由を想像することができなかったらしい。

もちろん、監督である私の父でさえも。