「…ってぇ……」

腕を伸ばしてボールを握るその人は小さくそう呟いて、私の投げたボールを見つめる。

「ご、ごめんなさい!」

「あー…別に、平気」

慌てて駆け寄って謝ると、帽子をかぶり直しながら答えてくれた。

でもその声に聞き覚えがあった気がして顔を覗き込むと、相手は驚いて顔をあげた。

「お前……朱里…?」

「やっぱりコータくんだ!元気だった?」

「あーうん。お前らは?」

「見ての通り、元気だよ!」

「そうみたいだな」

クロはコータくんに会えたのが嬉しいのか、ものすごい勢いで尻尾を振っていた。

初めて会ったときのことを覚えているなんてよっぽど好きなんだなあ、なんて心の中で呟いてみる。

「シロちゃんは?」

「ん?いるよ」

「えと……どこに?」

ニッと笑ってコートを脱いだコータくん。

コートの下にはトレーナーを着ていて、お腹の辺りについている大きなポケットの中に、シロが入っていた。