屋根裏にはクロが使っていた食器やトイレ、ゲージなどがきれいなまま置いてある。

母がよく掃除しているからだ。

「…これ使っていいかな…クロ?」

クラウンと書かれている食器を持ち上げながら、返事があるはずもないのに、私は屋根裏にある小さな窓から空を見上げて呟いた。

クラウンとはクロの名前。

何回呼んでも覚えず、さらに父が「クロ」と呼び間違えたため、名前がクロに変わった。

そんなことを思い出していると不意に、昔から聞き慣れたクロの声が聞こえた気がして、自然と頬が緩む。

「…ありがとねっ」

クロにお礼を言って屋根裏から荷物を降ろすと、そこには箱の中に入っていたはずのクロがいた。

「自分で出れたの…?」

返事の代わりに一回吠えたクロを見て、緩んでいた頬がさらに情けなくなる。

「すごいね、クロ!」

抱き上げて頬を擦りあわせる。

クロは小さいけどその毛並みは犬そのものであり、私はなんだか嬉しくなった。

そのときにはすでに、川原で会った男の子のことなどすっかり忘れてしまっていた。