「…お母さん、クロがいなくなったときにもう生き物は飼わないって言ったよね?」

家に着いて、私の持っている箱がなんなのか気付いた母に溜め息をつかれた。

想像していた反応だけど、実際目の前にして言われると胸が痛い。

「だ、だっ、て…」

「だってじゃないの。朱里だってクロがいなくなって悲しかったでしょ」

「…悲しかったよ?でも、もしこの子を見捨ててたらクロがいなくなったときより、もっと苦しくなってたと思う!」

「…朱里……」

母の言うことはわかる。

だけど私はクロを飼いたい。

見捨てるなんてできない。

「…いいんじゃないか?」

「渉さんまで…」

「また捨てに行くなんてしたら、それこそ可哀想だからなぁ」

「ホントに!?お父さんありがと!」

父からの許可が下りればこっちのもんだとばかりに階段を駆け上がり、自室に入る。

「まだ話は終わってないわよ朱里…っ!」

1階から母の声が聞こえたけど、聞こえないフリをして屋根裏に上ろうとした。

クロが切ない声で鳴いていて離れがたがったから、すぐ箱に顔を近付ける。

「すぐ戻るからね、クロ」

そう呟いて屋根裏に続く階段を下ろした。