すると男の子は照れたように視線を逸らして「なんだよ」と呟く。

「ううん、私もそのほうが助かるなぁと思って」

「ならいいけど」

上がった階段を降りて、男の子と並ぶ。
身長は私のほうが少し高いかもしれない。

帽子のせいで表情はよく見えないけど、多分同じくらいの年齢だと思う。

「…で、どっち」

「ん?」

「お前はどっち連れてくんだよ」

「わんこ?」

「…そのわんこって、いつもそうやって呼んでんのか…?」

「えと…別にそんな…」

「まーいいや。で、どっち」

箱の中を覗き込んで仔犬をよく見る。
黒い仔犬と白い仔犬。

黒い仔犬を見たときに、今はもう記憶でしかないクロのことが頭に浮かんだ。

昔飼っていたクロという名前の犬。
兄妹みたいに育ってきた、今はもう一緒に遊ぶことはできない…クロ。

「…黒い子にしていい?」

「あ?別にどっちでも」

「じゃあこの子にする。ね、クロっ」

「もう名前まで決めたのかよ」

そう言いながらも男の子は白い仔犬を抱いて「じゃあお前はシロだな」と微笑む。
帽子から覗くその笑顔にドキドキした。