カウントダウン・パニック



「そうか!だからヒントを解けても完全には爆弾を止められないって事か!」


寺崎は手をポンと叩く。


「それで、もう一つのヒントの意味は何?」


赤羽は渡辺を急かすように尋ねる。


「はい。実はこのヒント、“掛け詞”になってるんです。」

「掛け詞…って短歌とかに使うあれか?」


寺崎の質問に渡辺は頷く。


「はい。本来“掛け詞”というと例えば百人一首の中の小野小町の句で下の句に『わが身世にふるながめせし間に』というものがあります。」


渡辺は言いながら自分の手帳を開き句を書いていく。


「この中だと“ふる”が“降る”と“経る”、“ながめ”が“長雨”と“眺め”となり二つの意味を持ちます。」

「確かに。」


赤羽と寺崎は頷く。


「これが犯人が言っていたヒントの中にも使われていたんですよ。」

「でも犯人が言っていたのは〔急がないと主役は己の数字に喰われます。彼等は自らの場所でその時を待っています。〕よ?とてもこの中に二重の意味を持つ言葉はないと思うけど…。」