カウントダウン・パニック

するとまた仁科の体が強張った。


「もし彼女が言う“彼”があなたならば“ヴァーグナー仲間”というのは経政の読み方を変えたヘルマンの事。」


仁科は拳を強く握る。


「そして湯布院爽の場合、湯を漢字音読みで湯(たん)。布も漢字音読みで布(ほ)。院と爽はそのままで続けて読むと“たんほいんさわ”。つまり完全ではないが読むと“タンホイザー”と聴こえるんです。」


そこまで言うと仁科は鼻で笑った。


「確かに刑事さんの言う通り、その手紙のヘルマンは私です。湯布院爽も知っています。その事について嘘をついたのは認めます。」


仁科の言葉を聞いた風間や寺崎たちは一瞬安堵を見せる。


「しかし、それだけの事であって私が爆弾犯という証拠にはなりませんよ?」


すると再び風間たちは眉間にシワを寄せた。

しかし藤森は少し口の端を上げてみせる。


「何言ってるんですか。仁科さん、あなた自ら自分が犯人であると言ったじゃないですか。」

「はぁ?私は一言もそんな事…」