カウントダウン・パニック

仁科は少々哀悼しているようである。


「実はその方、二通の遺書を残しているんです。一通目は彼女の知り合いに向けての物だったので読まれたそうですが、もう一通は受取人が書いてあったもののそれが誰なのか分からずそのまま警察が保管していたんです。その手紙に書いてあった受取人の名前、何だと思います？」

「さぁな。」


すると藤森は自分のポケットにしまっておいた手紙を取り出し仁科に見せた。

するとそれを見た仁科は目を丸くさせた。


「ヘルマンへ。驚きました？この手紙、封がしたままだったので悪いと思いましたが中身を拝読させていただきました。そしたら内容的にどうもあなたに宛てた物のようでした。」

「まっまさか。ただ内容だけで私宛てだと判断するのはあまりにも短絡的ではないかい？」

「確かに。でも…」


すると藤森は封筒から便箋を取り出しある部分を見せた。


「ここに“仁科経政”と書いてあったら？あなた、知り合いですよね？嘘つきました？」

「なっ！？」


そこには確かに仁科経政と書かれていた。


「それから湯布院さんはこうも言っていたそうです。“私と彼はヴァーグナー仲間”だと。」