カウントダウン・パニック



「仁科経政の経(つね)は経る(へる)と読みます。そして政(ゆき)は人名用で使われる時に政(まん)と読む事が出来るんです。つまり読み方を変えたあなたの名前は“へるまん”。つまりヘルマンという事です。」

「なる程。」


納得した風間は感心しているようだった。


「それが何ですか?たまたまあなた方が言う犯人の名前と私の名前の読み方を変えたものが同じなだけじゃないですか。そんな事で爆弾犯だなんて言われたくないですよ。」


仁科は肩を窄めながら言う。


「湯布院爽。」


呟くように言うと今まで余裕のあった仁科の顔がやや曇った。


「この方、ご存知ですよね?」

「さっ、さぁ?初めて聴く名前ですが?」


あくまで白を切ろうとする仁科。


「実は先ほどあなたが犯人に仕立て上げようとした方からとある事件の話しを聞いたんですよ。」


するとちょうどそこに三階にいた赤羽と渡辺、そして寺崎がその場に到着した。


「五年前、花房歌劇団に所属していた湯布院爽という方が薬物を服用させられて声を失い自殺してしまった事件。」

「そんな事件があったんですか。可哀想に。」