ゆっくりと一人一人確認していくがこれといって不穏な動きをするものは誰一人としていない。

皆一様に舞台を見て、物語の先行きを見届けている。


場内は舞台からの明かりがあるぐらいでほぼ暗いと言ってもいい。

確かに爆弾の起爆スイッチの一つや二つ弄っていたところでさほど目にはつかない。

しかし客席に座っている以上、左右に座る客には目についてしまい怪しまれてしまう。

それを防ぐには如何に自然に、そして警察の目から逃れるかが大切である。


「渡辺、犯人は客席にいる以上絶対に大きな動きは見せない。取り敢えず今は手元が隠れている人を探し出して、その座席番号控えといて。」

「分かりました。」


小声でやり取りすると赤羽は後ろの客席から、渡辺は前の客席からそれぞれ探し始めた。