私は、なんだか照れくさくなって、握られた手を振り払った。
 


私も、あなたが好きです。


言いたかったけれど、本当にそういう言葉を口に出すのって、勇気がいる。
 


私は何気なしに、胸のポッケからアヒルシャープペンを取り出して、アヒルのあたまを人差し指で撫でた。


「……アヒルちゃん、可愛い」
 


どうでもいい言葉だけ、出てくる。



「――うん」



「花村さんが、昨日これに気づいてさ“陵からもらったの?”なんて聞かれた。――あ、なんで花村さん、沢原くんが持ってたものだって、気づいたんだろう」


今更になって、疑問の念が湧いてきた。