「なんか、嬉しいな、そのアヒル」



私の制服のポッケから、ちょこんと顔を出しているアヒルのシャープペンをつついて彼は言った。



「アヒルちゃん……ごめんね、沢原くんのお気に入りのものだったんでしょ」



「いいんだ。別に、もう」


そう言って、お日さまみたいに笑う彼の笑顔に、クラクラとしてしまった。



「もう? もういらないって?」
 


彼の言葉に引っかかりを感じた私は、何気なしに聞き返していた。
 


そして私は、彼の目をじっと見つめた。



沢原くんも、私の目をじっと見つめた。



私たちは、見つめ合っていた。