「おう、ちゃんとやってるみたいだな」
 


のっしのっしと歩いてくる“鬼”。



相変わらず、なぜか手には、黒板用の大きな三角定規を従えていた。



もう、装備品のひとつなのね。



「ちゃんとやってますよ」


沢原くんは言った。



“本当か?”という面持ちで、鬼は私たちの机の上のノートを見た。



そして、ふむ、と頷いた。


「まだ、間違えて香田に直されてるみたいだな。まだまだ勉強が足りんぞ、沢原」



あ……。それは私が解いて、逆に沢原くんが教えてくれた問題だった。
 


沢原くんも同じことに気づいたようで、ふたりして顔を見合わせて、クスリと笑いあった。