番外編

「本当に、思い込みだけは一人前なんだから」

この人もポニーテールなのだが、佳那美と違って落ち着きのある顔をしている。

狂気に満ちた顔をしたりもしない。

「久しぶりだね。また会えて嬉しいよ」

おいおい、何か感動の方向に持って言ってるよ。

「止めろ!美咲とキャラがかぶりそうな予感がする!」

「せっかく耕一と会える世界なんだから、少しぐらいかぶってもいいんじゃないかな?」

怒ったようにも見えるが、一番怖くはない。

耕一さんはうろたえたままである。

「私、耕一ががんばってるところ、見てきたよ。でも、人を傷つけるのはやめて欲しいな」

「それは出来ない。それが僕の戦いだ」

「どうしても?」

「ストーップストーップ。だから、シリアスにするなと言ってるだろうが!」

耕一さんが答える前に俺が間に入る。

「その問いと答えは言っちゃならんよ。本編では耕一さんと夕子さんは会えないんだからな」

「分ったよ。じゃあ、耕一、渚さん、少し普通の話でもしよっか」

三人は教室の隅っこらへんで会話を始めた。

重苦しい空気ではないところ、本当に普通の会話なのだろう。

「ふう、とめるのも一苦労だぜ」

「君が無駄に動きすぎているのが問題だ」

赤髪の先生である皆木楓さんが、俺の隣に立っていた。

「ヒロインじゃないってのはつらいですよね」

「君の口は非常に柔らかいようだな」

手に持っているのは接着剤だろうか。

「何に使うつもりなんですか?」

「君の口に塗ってあげようかと思ってね」

「どうせなら、リップがいいなあ」

「君にリップなんて代物は必要ないな」

なぜか怒っている。

ヒロインを降格させられたからだろうか。