番外編

「俺が本気を出すのは、お前が関わった時だけだ」

二枚目な表情を見せながら、歯を光らせる。

「嘘でしょう」

郁乃は見つめた瞳を半眼にした。

「お前のような女を手放すなんてもったいないだろ。だから、本気を出すんだ」

「だったら、影でこそこそと風俗に行ってるのは何故でしょう？」

「それは、向上心の表れだ」

「ひどい言い訳でしょう」

半眼よりも更に細目で睨みつけながらも、郁乃は許していた。

自分がいかにおかしい考えであるかというのは理解をしていた。

葉桜吟という自由奔放な母親の遺伝を受け継いでいるせいなのかもしれない。

そして、何度となく自分の危機を救われているせいなのかもしれない。