今日一日は難無く終えた。
ただ、寝坊の“お仕置き”か、藤咲さんの授業がいつもより2時間プラスされた。
「あおい、大丈夫?」
夕食どき、お母さんは思い詰めた顔をしていた。
「お母さんこそ」
「…あおいが元気ならお母さんも元気よ」
「お母さん、身代金はどうするつもり?」
お母さんはぐっと顔を顰めた。
そのとき、ちょうどお父さんが帰ってきた。
「あおい!大丈夫か!」
青ざめた顔で、急いで帰ってきたお父さんはすぐにあたしの方へ駆け寄った。
「お母さんと同じこと言ってる」
「大丈夫なのか?何とも無かったか?」
「大丈夫よ」
あたしは微笑んでみせるほど、余裕があった。
「それよりこんな早く帰って来て、社長として大丈夫なの?」
お父さんは度肝を抜かれたような顔をした。
「お父さんよりあおいが…」
お父さんは心配症なのだ。
日本でまだ平社員だったお父さんは、あたしが熱で寝込む度に休みをとって看病しに来る。
「社長なんだから無理して休まないでよ。見たでしょ?あの警備の人たち。あたし大丈夫だから、安心して」
「あおい……」
お父さんは口を曲げ、目をシバシバさせた。
「ごめんなあおい…令嬢ってもんは危険だなんて考えもしなかった」

