夕食を済ませ自分の部屋に戻る際まで、藤咲さんは付き添ってくれた。


「何かあったらこのチャイムを押すことを忘れないで下さい。外へ出る時も」


初日に家政婦さんが言っていたチャイムだ。


「はい」


あおいは頷き、藤咲は部屋の扉を閉めた。


はあ、と、あおいはベッドに倒れ込んだ。


ふかふかで気持ちいい。


疲れた。ほんと疲れた。

でも、色々ありすぎて頭がぐるぐるして眠れそうにないよ。


「あれ…そういえば」



何か忘れていた気がしたんだ。


それに気が付いた。


松永さんの言葉…



――磔け執事、藤咲だろう?


はりつけ執事?


意味深な言葉だった。


藤咲さんに聞いとけば良かったな。答えてくれるか分からないけど。


藤咲さんが松永さんの事を知っている様に、松永さんも藤咲さんの事を知っているのかな…


ぼんやり思った。


まだ疑問がある。

…あたしが松永さんに抱きしめられたとき

まさかだったよ。


藤咲さんが松永さんを殴ったんだもの。


ふたりは仲が悪いのかな。