藤咲さんは口を開いた。
「あの喋り方で執事をしてたの?」
「いえ…。あおい様、感じられたでしょう?」
「何を?」
確かに、変な人だったけど…
藤咲さんはため息を吐いた。目を細め、やれやれといった顔をした。
「…あおい様に理解してほしいことはひとつ。松永が誘拐犯の可能性は0ではありません」
「…え?」
松永さんが誘……
「これからは警戒が必要です。あおい様、決して一人で行動しないようにしてください。私は松永をよく知っています。彼の行動も予測出来ます」
「…どうして?松永さんは通り掛かりだって言ってた。松永さんを誘拐犯だって疑う理由が分からないよ」
「あいつは執事でした」
藤咲さんは声を強くした。
「松永が辞めさせられた理由は、家政婦の一人に恋をしてしまった。しかし松永が仕えたお嬢様は松永に好意をもっていたのです」
あおいは瞬きした。

