藤咲さんは手を離して腕を組み、はぁと息を吐いた。
「あの、それで、聞いていいですか?」
「なんでしょう」
藤咲さんは腕組みしたまま眉を下げた。
「さっきの、あの赤毛の日本人。松永さん。知り合いなんですか?」
藤咲さんの表情が固まった。
――磔け執事の藤咲だろう?
いじわるく笑った顔。
へんに表情が変わる人。
その前まで優しい言葉やいきなり抱きしめたりして
へんな人。
「すっごく変な人ね」
あおいも顔を顰めた。
あの時はびっくりしてたから思わなかっただけで、落ち着いて考えると、変だ。
「あ、言っておくけどあれは…あたしが抱き着いたわけじゃなくて松永さんが急に…」
「…松永……」
藤咲さんは聞こえないみたいだ。ぽつりと呟く。

