手紙を持つ手が震えた。 なにこれ。 なにこれ。 なんなのこれ。 「あの人だ…あの黒い男の人だ」 言葉がこぼれ落ちた。 「黒い男の人?」 藤咲さんは顔を顰めた。 あおいは口を覆った。 首を振る。 ――お前の大切な人を地獄に落とす。 「…あおい様」 「何でもありません」 「……」 藤咲さんは変わらぬ表情であおいを見る。 あおいは押し黙った。 「あおい様、どうして話さなかったのですか」 藤咲さんの口調が強かった。 あおいは驚いて藤咲さんを見た。 怒っている。