黒い男は植え込みの陰に連れ込んだ。
その間、ちらりと藤咲さんや家政婦さんの泊まる離れが見えた。
「大人しい女だな。やはり家政婦だったか?みつあみなんて地味すぎるしな」
冷たい声で男は言った。
そして、突然あおいを草陰に隠すように押し倒した。
「…うっ」
あおいは手をつき、俯いた。
「助けを呼ぼうか?」
「…え?」
パニックでよく分からない。
何が起きてる?
あたしどうなるの?
「…あなたは誰?」
やっと、掠れた声であたしはきいた。
すぐに男は答えた。
「誘拐犯」
あおいは目を見開いた。
ゆ…誘拐?
「金が無いんだ。ずっとこの屋敷に目をつけていた」
このままじゃ駄目だ。
あたしを囮にして、お金を取るつもりなんだ。
助けを呼んだらいけない。思うツボだ。
あたしが逃げなくちゃ…