私ん家の庭は
広い公園だ
花園がある。
きれいに整えられた芝生に煉瓦の道が置かれてる。
西日を帯びた芝生にかかる水滴がキラキラしている。
あおいは力無く微笑んだ。
庭師さん、お疲れ様。
心の中で呟いた。
そんなときだった。
背後で音がした。
「藤咲さん?」
あおいは振り向いた。
そこは植え込みで、人の姿はない。
なんだ、鳥か。
藤咲さんかと思った自分を恥じらいだ。
しかし今度は別の方向で、芝生を踏む音がしたんだ。
あおいは目を向けた。
人がいた。黒い人がいた。
背は高く黒いコートにフードですっぽり覆った顔。
見るからに不審者だ。
黒い人は止まることなくあたしに近く。
来ないで…
来ないで!
後退りもむなしく、黒い人に腕を掴まれた。
強い。男の人だ。