「もう嘘言わないで下さい!」
「嘘?私がいつ嘘を?」
「その顔です!」
あおいは藤咲の鼻先に指を突き差した。
藤咲さんは不動だったが、驚いたような顔をした。
「疲れませんか?」
「何をです?」
「ずっと笑ってたり…あたしに優しくしたり…し、執事の仕事とか…」
あおいはしどろもどろに言った。
「あおい様。疲れなどありませんよ。私には、昔から当たり前の事でしたから」
藤咲さんは困った顔をして笑った。
「私は今まで生まれながらのご貴族様にお仕えしていましたから、あおいのような特殊なお嬢様の気持ちが分からないのかも知れません。あおい様が申すのであれば、執事を変えて頂いてもいいですよ」
あおいは目を開いた。
そんな答えが来るとは思って無かったから。
あたし、ひどいこと言ったかな…
執事を変えるまで、藤咲さんが嫌いじゃないよ。
「あたしの…我が儘だから…藤咲さんはあたしのこと考えてくれてるのに…」
「あおい様は悪くありません」
藤咲さんは微笑んだ。

