部屋のそとに、家政婦さんが置いていってくれた、苺のブリュレのトレイがあった。
あおいは部屋に持って行き、夢中で食べた。
真夜中にブリュレなんて、今まで無かったからおかしな感じだけど、
「美味しい…!」
疲れていた心が、苺の香りで包み込まれる。
食べ終わってから、藤咲さんがいることに改めて気付く。
あたしがうなされてるのに気付いて、来てくれたんだろう。
心配して…
いや
執事として。
「どうしてあたしがうなされてるって分かったんですか?」
「忘れ物をしたのでお屋敷に戻ったんですよ。あおい様の部屋を通り掛かったところで物音がして…開けてみたらあおい様が布団を蹴り飛ばしてお眠りになっていらしたから…」
恥ずかしいところを見られた。
あおいは赤くなった。
「あおい様」
藤咲さんは真剣な顔をした。
「夕食を召し上がらなかったそうで心配しました」
「ううん…」
あおいは首を振った。
そして心の奥の端っこの方で、こっそり思った。
藤咲さんなんか、嫌い。
「あたし、ダイエットしてたから」
嘘をついた。
お互い様だもんね。
「にしては、夜中にブリュレを早速お食べになられましたね」
藤咲はやんわりと言った。
あおいは苦笑した。
「お腹すいて仕方なかったんだもの。だから変な夢見ちゃうんだわ」
藤咲さんは笑った。
「お身体に障りますよ。それに、ダイエットなんかしなくてもあおい様は十分きれいですのに」

