みつあみ少女にティアラを乗せて ж1部



「あおい様!」


藤咲さんだ。


ぐいんと現実に引き戻された。…いや、普通ならばこの状態は夢のような話だろう。



藤咲さんは息を切らしてやって来た。


「何も言わずに一人で…」


あおいはちょっとびっくりした。


「あたし、ちゃんと手紙置いてきました」



「勝手に行かれては困ります。あおい様にもしものことがあったら私の責任です…」



藤咲さんは息を整えながら姿勢を正して言う。


あおいは顔を顰た。


初めて…いや、最初のときのように、藤咲さんにムッとした。


「あたし、一人で散歩くらい出来ますから」


「…そういうことを言ってるんじゃありません。外出には危険がともなります。それにあおい様はお嬢様なのですよ。あなたを狙う人だっています」


「見ただけじゃお嬢様だなんて分からないです」

あおいはみつあみを握った。


藤咲さんはそんなあおいを見据えた。

黒く誠実な瞳が、探るようにあたしを見る。


その間もあおいはムッとしたままでいた。

ただ、その吸い込まれそうな瞳には視線を背けて。


「どこかに行かれる佐中ですか?」


藤咲さんは、髪を撫でるような優しい口調で尋ねた。


ドキドキするもんか。


ドキドキするもんか。