すると後ろのほうで〔ずるいぞ〕〔丸聞こえだぞー〕等と声が飛んだ。


〔うるせーよっ!〕


バコっと教科書が何かに当たるような音がした。それと共に、痛いやら何もしてねえやら声が聞こえる。


相変わらず、池野君のまわりは賑やかなんだね。


あたしは心の中で池野くんに呟いた。


〔…あ、じゃな平野!宮坂に代わるわ〕


「あっ、うん」



……ありがとうって言えなかった。


それから綾と少しお喋りしたあと、電話を切った。


ふう~っと息をつく。



ぼんやりしながらあおいは丘に行き、ホットドッグを食べる。



池野くん、地味なあたしのこと、ちゃんと見えてた。


一年の時からって言った。


一年のとき、あたしは池野くんと違うクラスだったのに、池野くんはあたしを知ってくれてた。


関わりなんて無かったから、あたしのことなんて名前くらいしか知らないと思ってた。



もやもやが晴れてゆく。


この空に日差しが入る。


ホットドッグを食べ終わったころ。



誰かの呼び声がした。