悲しい顔だ。


あたしから目を逸らして。


「申し訳ありません」


静かに言ったんだ。



「…え?」


どうすればいいのか分からなくなった。


どうしてそんな顔をするのか分からない。


悲しい顔しなくたって…。


「私は…あおい様と親しく在りたいと思っております。あおい様のためならなんでもすると誓います。けして、あおい様のご迷惑をかけたくはありません」


深々と藤咲がお辞儀したから、あおいは慌てて立ち上がった。


「そんな、つもりじゃ…わ!」


慌てた勢いでつんのめったあおいは、藤咲に激突した。


一瞬あたまが真っ白になった。


何が起こったのか分かるまで、2、3秒。



「…ごめんなさいっ!」


あおいは赤面して飛びのいた。


あ、あたしの馬鹿っ!ドジっ!


「気をつけてください」

藤咲は困ったように微笑み、ため息をついた。


「ごめんなさい…」


あおいは頭を下げた。


謝ったって藤咲さんを困らせるだけなのに

でもあたしは藤咲さんに嫌われたくなかったから

あたしは臆病者だ。


その時だ。


頭のてっぺんに滴が落ちた。