「あおい様、お下がり下さい」
すると藤咲があおいを庇うように、若い男とあおいの間に入った。
若い男はひどく機嫌が悪そうに、フランス語を発する。
それに対して藤咲も流暢にフランス語で対応した。
藤咲は頭を下げる。
若い男は納得したようになにか言い、去って行った。
「藤咲さん…すごい!」
あおいは思わず声を上げた。
心臓の音は、高鳴っていた。
それに…藤咲の背中が、とても近かったから。
「執事として、これくらいは」
藤咲は振り返り、あおいを見下ろして微笑んだ。
こういうちょっとした仕草が、大人びていて。
安心して頼れるって思わせるんだ…。
「ではあおい様、少し静かなところに移りましょう」
「あ、うん、そうだね…」
藤咲は手を差し延べた。
…差し延べ……え?
ええ?
えええ?
「私がリードします」

