〔早くしないと池野誰かに取られちゃうよ?〕
「綾が見張っててよ!」
〔あおいがちゃんと池野に気持ちを伝えられるならね?〕
意地悪く綾が言う。
「あっでもね!あたし執事さんと話せたんだよ!」
あおいは乗り出した。
〔執事?え、執事ってほんとにいるんだ〕
「うん。ハーフで背が高くって燕尾服みたいなの着て、いつも微笑んでて優しくて…」
〔執事かぁ、おじさんでしょ?あおいが惚れるほどダンディなんだ?〕
え?
あたしが…?
〔ん、あおい?聞こえてる?〕
綾が藤咲をおじさんとかダンディとか言ったことより、ずっとあおいをドキリとさせる事を、綾がさらりと言ったのだ。
「あたしが…惚れる?」
じわりと汗ばんだ。
「あたしが…藤咲さんを?」
〔ちょ…あおいってば、そんな本気なことじゃないでしょ?〕
「…綾、藤咲さんは若くて綺麗な人なんだよ」
〔……あおい…?〕
「あたし…あたし、藤咲さんを好きになっちゃったのかもしれない…」

